日本国内における生成AIの活用は、ここ数年で急速に広がり、大手企業からベンチャー企業まで、多様な事業者がこの分野へ積極的に参入しています。通信、エンターテインメント、医療、金融、製造業など幅広い業界で、業務効率化や新規ビジネスの創出が進んでいます。今後は海外発のサービスのみならず、国産の生成AIサービスがさらに増加することが予想され、その技術力と信頼性の向上が期待されています。本記事では、2025年最新版として、日本国内で注目される生成AI企業18社を、大手企業とベンチャー企業に分けて詳しく紹介するとともに、各社の特徴や具体的な活用事例について解説します。
大手企業による先進的な生成AIソリューション
NTT:tsuzumi
NTTは長い歴史と豊富な実績を背景に、通信業界のみならず、ICT全般に渡るソリューションを提供しています。同社が提供する生成AIサービス「tsuzumi」は、テキストデータの解析と生成に強みをもつ技術です。
・主な機能:自動応答システム、文書生成、膨大なテキストデータの解析による情報抽出
・利点:業務の効率化、コスト削減、ヒューマンリソースの有効活用
・具体的な活用事例:大手銀行でのカスタマーサポート自動化、新聞社でのニュース記事自動生成、製造業における生産データの解析
このように、tsuzumiは様々な業界で業務プロセスの自動化や精度向上に寄与しています。
NTTグループ:corevo
NTTグループでは、corevoという生成AI技術を活用し、対話システムや生体情報処理など、幅広い分野での応用を推進しています。
・主な機能:Agent-AIによる対話支援、Heart-Touching-AIによる健康・メンタルケア、Network-AIによるシステム全体の最適化
・利点:業務の効率化、コスト削減、サービス品質の向上、ユーザー満足度の向上
・具体的な活用事例:JAFのコールセンターでの問い合わせ対応自動化、書店や図書館での書籍レコメンドシステム、高齢者施設での安全管理機能
corevoは高度な自然言語処理や音声認識技術を駆使し、様々な業務現場で実際の効果を発揮しています。
Sony AI
ソニーグループが設立したSony AIは、エンターテインメントやエレクトロニクス、金融分野における新しいコンテンツ生成やサービス開発に取り組んでいます。
・主な機能:映像編集や特殊効果の自動生成、スマートホーム向けの音声・画像認識、金融分野でのリスク管理や市場予測、チャットボットによる顧客対応
・利点:クリエイティブプロセスの効率化、新規コンテンツの創造、ユーザー体験の向上
・具体的な活用事例:映画制作支援による映像編集の効率化、スマートホームシステムにおけるパーソナライズサービス、金融サービスでのリスク管理体制
Sony AIの独自技術は、業界を超えた革新を促し、新たな市場価値創造につなげています。
富士通グループ:FUJITSU Human Centric AI Zinrai
富士通は長年にわたりAI技術の研究を積み重ね、「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を開発しました。
・主な機能:画像・音声処理、自然言語の分析・理解、精度の高い多言語翻訳、最適な候補選定技術
・利点:業務効率の大幅な向上、高度な自動化による運用コスト削減、精度の向上による業務高度化
・具体的な活用事例:新聞社での記事要約、コールセンターでの顧客満足度定量化、小売店の来店客数予測、さいたま市での保育所入所選考の効率化
Zinraiは、豊富なAI技術を統合し、複雑なデータ解析や自動判断を実現することで、各分野でのデジタル変革をリードしています。
NECグループ:NEC the WISE
創業120年以上の歴史を持つNECは、複数の先進技術を組み合わせた生成AIブランド「NEC the WISE」を展開しています。
・主な機能:デジタルデータの鮮明化、ノイズ除去、生体認証、テキストの意味理解、異種学習による解釈付き分析、最適化技術
・利点:業務プロセスの迅速化、高精度な個体識別、情報分析の精度向上、コスト削減
・具体的な活用事例:住宅ローンの事前審査、工事現場での動態監視、コンサート会場での顔認証、創薬分野での免疫治療法開発
NEC the WISEは、企業の多様なニーズに応じたカスタマイズが可能であり、社会インフラとしても信頼性の高いサービスを提供しています。
日立グループ:Hitachi AI Technology/H
日立グループが提唱する「H」は、データ解析と仮説生成を軸に、業務改革や現場の効率化を実現する生成AI技術です。
・主な機能:大規模なデータから自動的に仮説を生成、業務プロセスの最適化、無人搬送車などによる物流効率化、サイバーセキュリティ対策
・利点:業務の効率化、コスト削減、リソース活用の最適化
・具体的な活用事例:製造業でのプラント設備の劣化要因の分析、倉庫における過剰在庫原因の解析、サイバー攻撃インシデントの評価と迅速な対応、無人搬送車「Racrew」による作業効率向上
Hは、日立独自のビッグデータ解析技術とAIシステムを融合することで、現場の課題解決に大きな効果を発揮しています。
生成AIベンチャー・スタートアップ企業の最前線
株式会社Preferred Networks:Chainer
2014年に設立されたPreferred Networksは、ディープラーニングを中心とした研究開発を行う先進的なAIスタートアップです。
・主な機能:ディープラーニングのモデル構築とトレーニングを支援するオープンソースフレームワーク「Chainer」
・特徴:「Define-by-Run」方式による柔軟なネットワーク定義、高速な並列処理(CUDA対応)、多種多様な応用領域(画像認識、自然言語処理、音声認識、ロボティクスなど)
・おすすめ対象:研究者、開発者、学術機関、技術企業
Chainerはその柔軟性と高い計算速度を武器に、最新の研究開発や産業応用の現場で広く活用されています。
SENSY株式会社:SENSY
SENSY株式会社は、2011年に設立され、消費者の感性や嗜好をデジタル解析することに特化した生成AI技術を提供しています。
・主な機能:パーソナライズされたマーケティング支援「SENSY Marketing Brain」や在庫管理の最適化を目的とした「SENSY Merchandising」
・利点:顧客個々の情報をもとにした、最適な商品のレコメンド、効果的な広告・キャンペーンの展開、需要予測による在庫管理の効率化
・おすすめ対象:小売業、アパレル企業、マーケティング担当者、ECサイト運営者
SENSYの技術は、消費者の感性を正確に捉えたマーケティング戦略の立案に活用され、顧客満足度向上と収益増大に寄与しています。
HEROZ株式会社:HEROZ Kishin
将棋AI開発から始まったHEROZ株式会社は、その高度な戦略判断技術を基盤として、他分野での応用も推進しています。
・主な機能:頭脳ゲームエンジン、異常検知エンジン、経路最適化エンジンの統合による複合ソリューション
・利点:高度な戦略分析、意思決定支援、設備の異常検知、物流や配送ルートの最適化
・具体的な活用事例:金融機関でのリスク管理、製造業・建設業での設備保全、物流業界での配送最適化、ゲーム開発での高度な戦略シミュレーション
HEROZ Kishinは、従来の将棋アルゴリズムから転用された技術により、多数の業界で革新的なソリューションを提供しています。
株式会社オルツ:P.A.I.
株式会社オルツは、個人の意思や知識をデジタル化し、クラウド上で活用する独自の生成AI「P.A.I.」を開発しています。
・主な機能:ユーザーのタスクと意志を反映し、自動化される業務効率化システム
・利点:経営者や管理職の意思決定支援、スタートアップや大企業での生産性向上、個人事業主やフリーランサー向けのタスク自動化
・おすすめ対象:企業経営者、管理職、スタートアップ、大企業、個人事業主
P.A.I.は、忙しいビジネスパーソンの負担軽減と、効率的な業務遂行を実現するための強力なツールとして注目されています。
Sakana AI株式会社:Sakana AI
2023年8月に設立されたSakana AIは、元Google AIの研究者による先進的な知見をベースに、生物模倣技術と生成AIを融合した革新的なアプローチを採用しています。
・主な機能:生物の集団行動・適応性を模倣するAIモデル、複数の小さなAIモデルの協調によるテキスト、画像、コード、マルチメディア生成
・利点:柔軟性と適応性の高いシステム、変化に迅速に対応可能な生成技術
・おすすめ対象:テクノロジー企業、研究機関、スタートアップ、クリエイティブ産業
Sakana AIは、生物の進化や集団行動に着目した新たな生成アプローチにより、従来にない問題解決やクリエイティブなコンテンツ創出を実現します。
株式会社Jitera:JITERA
株式会社Jiteraは、IT人材不足の解決と新規事業の立ち上げを支援するため、開発自動化プラットフォームを提供しています。
・主な機能:Web、iOS、Androidアプリのフルスクラッチ開発を自動化、アジャイル開発手法とデザイン支援、データドリブンな仮説検証とグロースハック
・利点:開発スピードの大幅な向上、UI/UXの最適化、プロダクト改善を迅速に実現
・おすすめ対象:スタートアップ、大企業の新規事業部門、プロダクトマネージャー、エンジニア、デザイナー
JITERAのプラットフォームは、限られたリソース環境下でも高品質なプロダクトを迅速に生み出すため、業界内で高い評価を受けています。
株式会社FRONTEO:KIBIT
株式会社FRONTEOは、法務、医療、ビジネスインテリジェンス分野に特化した情報解析ソリューションを展開しており、その代表製品「KIBIT」は、テキスト解析に特化した生成AIです。
・主な機能:大量のテキストデータから有用な情報を抽出、少量の教師データから高精度な解析を行うエビデンス発見機能、ビジネス文書の解析支援
・利点:情報抽出の迅速化、意思決定に資するインサイト提供、業務効率の大幅な向上
・おすすめ対象:法務部門、法律事務所、医療機関、製薬企業、データアナリスト
KIBITは、少量のデータからでも的確な解析を行い、多岐にわたる分野で利用可能なツールとして、多くの企業から支持されています。
生成AIを活用する日系企業の事例
サントリー:独自の生成AIによるCM制作
サントリーは、生成AIのアドバイスを基に独自のCMコンセプトを導入し、話題沸騰のプロジェクトを実施しています。
・活用内容:C.C.レモンのボトルデザインやブランドイメージをヒントに、AIで生成した擬人化キャラクターを制作。顔のデザインはスタッフの写真をベースに生成し、さらに衣装やセリフも生成AIで自動作成。
・成果:独自性の高いキャラクターが認知され、SNSやYouTubeでのコンテンツ展開により、ブランドイメージの向上に大きく貢献中。
学研:個別学習支援システムの進化
学研ホールディングスは、生成AIを活用した学習支援システム「GDLS」を導入。OpenAIのChatGPTを組み込むことで、生徒一人ひとりに合わせた最適な学習アドバイスを提供しています。
・活用内容:生徒の学習履歴や理解度をリアルタイムで分析。パーソナライズされたフィードバックによって、効果的な学習環境を実現。
・成果:生徒の習慣化支援を促す仕組みや、正答率に応じた問題出題で、学習効率とモチベーションの向上を実現。
SMBCグループ:社内向け生成AIアシスタント
SMBCグループは、Microsoft Teamsに統合された生成AIアシスタント「SMBC-GAI」を開発。ChatGPTをベースに、専用環境上で動作することで情報流出のリスクを抑えつつ、業務効率を高めています。
・活用内容:専門用語検索、メールの下書きや文章要約、さらにはプログラミングコードの自動生成など、多岐にわたる業務サポート
・成果:社内コミュニケーションの効率化と、オペレーターの負担軽減に寄与。今後はコールセンター業務への展開も期待されています。
ビズリーチ:生成AIで職務経歴書自動作成
転職プラットフォームを展開するビズリーチは、生成AIを活用して、ユーザーが簡単にプロフェッショナルな職務経歴書を作成できる機能を導入しました。
・活用内容:職種、ポジション、業務内容などの基本情報を入力するだけで、生成AIが自動的に最適な文面を生成。
・strong>成果:作成時間の大幅短縮と、スカウト受信率の向上(約40%増加)により、多くの転職希望者に好評です。
オムロン:生成AIを活用したロボット開発
オムロンは、生成AI技術を応用し、人と機械の連携を高めるロボット開発に注力しています。
・活用内容:生成AIが搭載されたロボットは、人の指示や環境情報を学習し、危険な現場でも自律的に作業を行うことが可能。
・成果:極端な気温や放射線量が高い環境下での作業支援、研究機関や製造業における作業効率の大幅向上が期待されています。
おわりに
日本の生成AI業界は、これまでの識別系AIに留まらず、データの生成とクリエイティブな提案を行う技術へと大きくシフトしています。大手企業が持つ豊富な実績と技術力、そして先進的なアイデアを武器にするベンチャー企業が切磋琢磨し、各分野で新しいビジネスチャンスを創出しています。NTTグループ、Sony、富士通、NEC、日立といった伝統ある企業は、確かな技術基盤のもと、幅広い業務領域での課題解決に寄与。さらに、Preferred Networks、SENSY、HEROZ、オルツ、Sakana AI、Jitera、FRONTEOといったベンチャー企業は、柔軟な発想と先進技術で市場に革新的なソリューションを提供しています。
また、サントリーや学研、SMBCグループ、ビズリーチ、オムロンなど、日々の業務やサービス向上に生成AIを積極的に取り入れる事例が増加しており、今後もその可能性はさらに広がると考えられます。
企業・自治体・教育現場における実例を通じ、生成AIが業務効率向上、コスト削減、サービス品質の向上、さらには新規ビジネスの創出に直結している現状は、今後のデジタルトランスフォーメーションを強力に後押しする要素と言えるでしょう。
日本国内における生成AIの進化は、技術革新とともに安全性や信頼性の確保も進み、政府のガイドライン整備や業界による認証制度の構築など、社会全体の基盤整備も同時に進められています。
これからも各企業がどのようなサービスや技術革新を展開し、生成AIの新たな可能性を切り拓いていくのか、その動向から目が離せません。
本記事で紹介した18社の事例を参考に、あなた自身も生成AI技術を活用した業務改善やビジネスアイデアの創出に取り組んでみてはいかがでしょうか。技術の進展とともに、私たちの日常やビジネス環境は大きく変革し、新たな価値が生まれていくことでしょう。